<aside> 🌪️ 「ここ、どこ……」 目が覚めた時、私は知らない土地に居た。そうだ、竜巻に飲み込まれたのだ。擦り傷だらけの掌に息を吹きかける。傷を治し、立ち上がる。竜巻が過ぎ去って自分だけじゃなく周囲もぐちゃぐちゃだ。でも少し離れたところに人と、大きな街があるのが見えた。あてもないので杖を手に歩き出す。いったいここはどこだろう。世界中見て回ったことがあるけれど、ちっとも見たことのない景色だった。 「すごい」 だって、街の中にはきらきらとした高い建築物がたくさんあった。行き交う人、馬より速そうな乗り物。空を箒じゃないものが飛んでいる。夢物語のような世界で、私は少し困ってしまった。精霊があまりいない。魔女としては問題である。 「魔法が使えないわけじゃないか。なんとか……」 握った杖に視線を落とす。魔道具にはたっぷり魔力を溜め込んである。しばらくは持つだろう。 私はふと立ち止まった。往来の目が私に向いている。不思議そうに、あるいは訝しげに。窓ガラスに映る自分の姿を見て得心した。これは、周囲からかなり浮いている。ローブの裾はずたずたで、耳飾りは片方無くなっている。ティアラはかろうじて残っていたが、髪はぼさぼさで砂埃まみれ。パーティの途中で嵐に遭ったみたいにぼろぼろだった。これでは目立つ。 「靴もないし……、そうだ」 どこかに飛んでいってしまった靴の代わりに銀の杖を靴に変える。ついで金のティアラをつばの広い帽子に。裂けたドレスはショーウィンドウに並ぶ白いワンピースに。新しい装いに気分も明るくなる。 「よし、ここがどこなのか調べて、帰らなきゃ……」 ふと私は足を止める。帰る? 帰ったって、何もない。私の心を弾ませるようなものは何も。この街のほうがずっと――。 「たのしそう」 そう、ずっとずっと、楽しそうだ。 つまらない満月の夜に占いをした。何の慰めにもならないはずの遊びは、意外な結果を予言した。竜巻が来る。触れればすべてを失う、と。いいじゃないか、と思ったのだ。千年生きたって楽しいことなんてなかった。あったとしても、忘れてしまった。まだ奪えるものが残っているなら奪ってみろ、と。その結末がこれ。自然と口角が上がる。薄々気づいていた。ここはどこか遠い土地なんかじゃない。私が知らない別世界だ。 ひらひらと薄紅色の花弁が舞っている。それを追って私は歩いた。見事な大樹が満開の花を咲かせていた。 「きれい……」 「本当だね」 急に話しかけられて私はびくっとした。いつの間にか隣に男が立っていた。 「でも不思議。この街で生まれ育ったら当たり前の光景だ。こんなに感嘆するなんて、もしかしてフォルモーントシティは初めて?」 はい、と私は頷いた。フォルモーントシティ。それがこの街の名前。 ふむ、と男は顎に手を当てた。 「じゃあ困ってる? 初めて来たのに荷物がひとつもない。盗まれた?」 「えーと、その、失くしちゃって……、竜巻で……」 苦しい言い訳を男はとりあえず放置してくれた。こてんと首を傾げる。 「じゃあ、無駄かもしれないけど交番に行く? ああ、俺が金を貸してもいいけど」 「……どうして?」 唐突な申し出に私は彼を疑いの目で見る。ふふ、と彼は微笑んだ。 「だって、生まれたての赤ん坊みたいだもの、きみ」 私はぷっと吹き出した。赤ん坊。なるほど。確かに何もかも、初めて見る光景だ。 「俺はムル。きみは?」 「私は……」 アキラ、と名乗ろうとして口籠る。私の名前。どうしよう、と思う。赤ん坊みたい、と目の前の彼は言った。新しい世界。新しい人生。なら、名前だって。 「もしかして、忘れちゃった? 竜巻のせい? シティには掠らずに済んだけど、結構な被害だったからね。巻き込まれたのかい、きみ」 「そう、そうです……。竜巻に乗ってここに来たんです。ずっと遠くから」 冗談みたいな告白に、ムルはうんうんと頷いた。 「竜巻に乗って……。凄いね、オズの魔法使いのドロシーみたい。知ってる? 知らないの? 変なの」 よし、とムルは手を叩き、私の手を取った。 「じゃあ、今日からきみはドロシーだ。カンザスみたいに遠いところから竜巻に乗ってやってきた。いつか本当の名前を思い出したら教えてね」 「ドロシー……」 なんだかとてもしっくりする響きだった。いい名前ですね、と私が呟く。気に入った? とムルがにんまりと笑う。私の手を握り、ムルはきらきらと瞳を輝かせた。 「歓迎するよ。フォルモーントシティへようこそ、ドロシー!」
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こんなところまで見てくださりありがとうございます。 パラロイ読んですごいよくて、でもオズ出てこなかったな~まあ出てこないってことは捏造し放題だもんな~と思いつつできあがったのがこちらです。やりすぎだよ。 というわけで捏造いっぱい考えたけど触れてない部分もあるのでどっかに載せておこうかな、と思ってこのページを作りました。主にドロシーとか。あとは雑談です。
こちらが元凶ですわ…
フィガロ(14)、双子と接触
フィガロ(15)、双子の屋敷に チレッタ(18)ルチル(2)
オズ(12)、双子に拾われる フィガロ(17)
フィガロ(19)オズ(14)、双子の別荘に行く
フィガロ(20)、屋敷を出て独立 フォルモーント・ラボの研究員に
双子死亡 フィガロ(24)オズ(19)
カルディアシステム開発開始 フィガロ(28)オズ(23)再会
フィガロ、ドロシーの存在を知る この頃ファウストの事故が起きる
オーエンの製造開始
オズがヘリ事故で死亡 フィガロ(31)オズ(26) ドロシーへのアクセスを感知し、晶が起動する
双子(アシストロイド)の暴走 カルディアチーム解散 ラスティカ辞職